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nakaさんの『椿姫』舞台感想

●イザベルとの出会い
 初めてイザベルを見たのは『カミーユ・クローデル』でした。大理石の塊から作品を造る彫刻に興味があったのが、きっかけでした。
94年10月、『王妃マルゴ』が京都国際映画祭で招待作品として公開、ましてイザベルがゲストで来日すると知って見に行きました。しかし体調不良で来日はキャンセル、でも『王妃マルゴ』のイザベルは相変わらず奇麗でした。

今年、yoshさんのホームページを見つけたのが偶然にも6月27日、そうイザベルの誕生日だったのです。
そして17年ぶりに『椿姫』で舞台に立つことも知りました。イザベルの舞台なんて、この機会を逃したら二度と見ることが出来ない、そう思いました。
その2日後、チケットの予約が始まったというニュースを知って少し焦りましたが、なんとかチケットを手に入れる事が出来ました。

●いよいよパリへ
 11月2日(木)、飛行機はシャルル・ド・ゴール空港に定刻より20分ほど早く到着、でもターミナルに着くまでけっこう時間がかかりました。機内から出ると真冬の前回より、日本との気温差がある11月のほうが寒く感じました。荷物を受け取ると、さっそく空港の売店でイザベルが表紙の『ELLE』を購入。

パリまではバスで移動することにし、高速道路を経てポルトマイヨーあたりにさしかかると、ライトアップできらめく街並が目の前に入ってきました。パリに来たという実感が、やっと湧いてきました。 滞在予定のホテルは、凱旋門から徒歩で約5分。メトロの駅が目の前にあるからとても便利で、前回は零時近くまでメトロを利用してました。(といってもミレニアムで人が多かったから)ホテルにチェックインすると、まずスーツケースから荷物を取り出して整理。

しかし12時間のフライトで相当疲れてたのか、そのままベットで寝てしまいました。11月3日(金)、この日の予定は、ベルサイユ宮殿の半日観光。日本で購入したパス「パリヴィジット」があるから、切符を求める行列を横目に、改札へ。

ところが赤ランプ点滅で通れない!ちょっとしたことも異国では大事件。結局切符裏の磁気が弱かったのが原因でした。 防寒対策万全の服装にもかかわらず、庭園は冷たく吹きつく風でとても寒かったです。

想像してたのと違いましたが、その後ガイドさんから、ベルサイユの庭園は王様が宮殿の中から奇麗に見えるように設計されてる、という話を聞いて納得しました。午後は、イザベルのオフィシャルサイトの管理人、Anneから教えてもらったお店で『アデルの恋の物語』のポスター(600フラン)を悩んだあげく買いました。セーヌ川沿いにあるお店で、イザベルが表紙の雑誌『STUDIO』『PREMIRE』など数冊を購入。

それからルーブルの南にある芸術橋で写真を撮ってた頃に、ポツリ、ポツリと雨が。すぐ止むと思ったら、パリには珍しくどしゃ降りの雨が降ってきました。あいにく傘を持っていなかったので、ずぶ濡れに。出発前に風邪をひいていたので、これが原因でこじらせてしまいました。

●ついに「椿姫」鑑賞
 11月4日(土)、これまでE-mailでやりとりしていたAnneと会うことに。しかし朝から熱が少しあり、午前は出かけるのをやめてホテルで休んでいました。午後1時、ルーブル美術館のピラミッド前で待ち合わせ。でも周囲は多くの観光客で、Anneを見つけられるか不安(前日Anneから届いた、腰までのロングヘア、というメッセージのみが頼り)でしたが、Brunoと二人で来てくれました。しばらくしてErinも到着。

Brunoは用事があるので、AnneとErinの3人で館内を回ることになりました。私は4時からのマチネー公演も見る予定だったので、優先的に自分が最初に見たい絵画、つまりレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」があるドノン翼へ直行。モナリザの前は、いつも人だかりでゆっくり見れませんでしたが、ベルサイユにあったナポレオンの載冠式の絵画はルーブルにもあり、比べて見ることが出来ました。

 3時半頃、二人とは分かれてタクシーでマリニー劇場に。マリニー劇場の前は、開演を待つ大勢の人でいっぱいでした。場内は、想像していたよりも小さく、奥が階段上の舞台に2階だてのボックス席のセットが左右に組まれていました。

 フランス語で、アナウンスが流れると照明が少しずつ暗くなり芝居が始まりました。演奏は、バイオリンのみとシンプルで、まず嘆き悲しんでいるナニーヌとシャルルが登場します。

小説を読んだときは、若い小間使いというイメージで勝手に想像してたので、その違いに少し戸惑いました。遺品を整理する彼女は、気が狂わんばかりにシャルルにマルグリットを失った悲しみを訴えます。

その後プリュダンスとのやりとりが続き、プリュダンスとシャルルが舞台奥に描いていた扉を開けるのです。最初絵だと思っていたので驚きましたが、扉の向こうには黒いガウンを着たマルグリットのシルエットがライトで浮かびあがります。

とても幻想的なシーンは、観客をひきつけ、ゆっくり階段を降りてプリュダンスが持ってきた白い椿の花束を持って戻っていくのです。

 イザベルを初めて見た印象は、他の俳優に比べると顔も小さく、髪を中央で分けて下ろした感じが神秘的でした。舞台の上のイザベルを見ているのが、夢のように思えました。

 今回、俳優たちが舞台上だけでなく最前列の通路にまで下りて演技していたので、客席と舞台が1つになってました。酷評していた記事の中で、透明の幕がおりてしばしば劇を中断していたありましたが、あれは場面転換上あった方が効果的と思いまし た。
例えば、アルマンとマルグリットのベットシーンでは、ふたりが抱き合ったところで幕が下り情事が終わったあたりで幕が上がるという感じです。今回の「椿姫」は原作に忠実というより、アルマンとマルグリットの恋について絞って構成されてるようでした。セットや衣装を見る限り、現代版「椿姫」として見ることもできます。

 次にアルマンがマルグリットに心奪われて親友にあれこれ尋ねるシーンにうつりした。アルマンの印象は、すごく繊細でイメージ通りでしたが、シャルルだけはちょっと今風な感じで少し浮いていました。プリュダンスの演技が以外にも、観客に大いに 受けてました。そしてイザベルが登場。

アルマンを笑いものにする場面で、あの高笑いが場内に響渡ります。「王妃マルゴ」で男を品定めする時のシーンのように、これでもかってくらいに笑うと、アルマンは、すごく恥ずかしくなっていたたまれないと いう表情をしてました。

しばらくして、パトロンの老紳士とアルマンがはち合わせしてから、マルグリットはアルマンに本気で惚れていきます。ラブシーンは舞台をベットにという感じで、大胆に床に寝転んでの演技が続きます。日本の芝居ではあまり見られない手法というか、ちょっとリアルで見てる方が少し照れてしまいました。



今回注目したのは、病いに苦しむマルグリッドをイザベルがどう演じてくれるかという事でした。後半、アルマンに拒絶される悲しみと病いで苦しむマルグリットの姿は、悲痛そのものでした。見ていて「アデル」の時の演技が甦ってきました。終盤、病いで喋る事もできないマルグリットを、イザベルは全力で演じていました。

このシーン は、小説も読んでいてもどうなるか想像できませんでした。見てるこちらまで呼吸するのを忘れるくらい迫力がありました。マルグリットが息絶えて幕が下りたかと思うと、幕全体が落ち一部を握ったマルグリットが立っていました。

 そして最後にマルグリットの独白で舞台は終わりました。鳴り響く観客の拍手に、キャスト全員が快く応じていました。フラッシュの光りにいやな顔ひとつせず、舞台をやりとげた充実感と感動がイザベルの表情で分かりました。

この時のイザベルは、映画でも見ることもできないし、この劇場にいる人だけにしか見ることができないイザベルでした。大半の人は涙で潤んでいました。2時間半(トータルで5時間)近く自分の目の前でイザベルの芝居を見れたことに感動しました。

このとき、もしかしたらイザベルはこれからも舞台での活動も続けていくのではないかと思いました。その間も観客の拍手に応じるために舞台全体を移動しながら手を振ってくれました。

 やっと幕が下りた時、時計の針は11時半を指していました。AnneとBrunoはイザベルの楽屋を訪問するので、メッセージを渡してもらえることが出来ましたが、その時は感動してて書くのを忘れてしまいました。その後イザベルのファン数人も加わってレストランに行きました。楽屋から戻ってきたAnneとBrunoは、イザベルのサインをもらいご満悦でした。

営業時間ぎりぎりまで話しこんでたので、時計を見るとすでに2時。ErinとAnneをタクシー乗り場まで見送ると、そこでみんなと別れました。凱旋門まで歩いて帰ると、真夜中の凱旋門は、緑色にライトアップされていて奇麗でした。

明日はもう帰国だったので、明け方までパッキング。帰りの飛行機の中では、ほとんど眠っていましたが、20世紀最後を締めくくるにふさわしい旅を過ごせて良かったです。



nakaさん、ありがとうございました。

※転載・コピーは許可しておりません。