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Marie Duplessis


今は贅沢をするために不道徳な生き方をしているが、
心底から愛情深く、恋のためにどんな大きな犠牲も辞さない。
マリー・デュプレシはそんな女性だった。

アレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿姫』の主人公マルグリッドのモデルになった、
パリの高級娼婦マリー・デュプレシMarie Duplessis (1824-1847) のミニチュア肖像。
肺結核のために23歳でこの世を去ったマリー・デュプレシの墓は、
今もパリの 墓地ペール・ラシューズPere Laschaiseに見ることができる。

この小説は全くのフィクションではなく、実在の椿姫と呼ばれた女性がいた。
デュマ・フィスと同じ1824年にノルマンディーに生まれ、1847年に肺結核でこの世を去った マリー・デュプレシその人である。
小説の中で語られているとおりの美貌と趣味の良い衣装や化粧品を身につけ、さらに気品と才知とをすべて兼ね備えていた。
現実にデュマ・フィスも一目見て恋におちた当の相手であった。
身分高く裕福なブルジョア貴族を相手にしている彼女に、気後れしながらもやっと近づけたデュマ・フィスだったが、結局別れることになる。

マリー・デュプレシの死の翌年、パリ郊外に引きこもって以前愛読した『マノン・レスコー』を読み返しながら、 彼女に対する恋心を断ち切ろうとして書きはじめたのがこの小説である。真実の愛が人を高貴にし、魂を救う、というのがこの作品全体に流れる主題である。そのような作者自身の心情が主人公たちにこめられているのが今も傑作として読まれる原因であろう。

「真実の恋であれば、相手がどんな女であっても、男を高めてくれる」
(『椿姫』第20章より)
マルグリッドのような女が一生に一度の真剣な恋で魂を清められるということだけでなく、男もまたそうであるという、作者がアルマンに言わせた言葉は、若い作者の情熱を表すだけでなく、社会の偽善に疑問を投げつづけたデュマ・フィスの面目であろう。



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